田山花袋「蒲団」 あらすじ&偏見感想文 中年男、片恋の結末 [読書]
中年男の、心の音が聞こえてくるようだ。
十代にこの小説を読んでもつまらなかっただろう
二十代ならどうか?
恋を知ってはいても、面白く読めただろうか?
六十代になって、やっと読めた気がする。
横山芳子は、岡山県の田舎の豪家に住み
東京で美文的小説を書いている竹中時雄に
弟子入りを願う手紙を、再三出していた。
最初は取り合わなかったが、芳子の志の強さを感じ
時雄は弟子入りを認めることとなった。
父親と共に、芳子が時雄宅を訪れたころ
時雄の妻は、三人目の子供を出産したばかりで
時雄は結婚生活にしろ仕事にしろ、すでに孤独であった。
時雄三十六歳、芳子十九歳。
華やかな声、艶やかな姿の芳子が
先生!先生!と慕ってくると
時雄の心はときめき、恋しく思うようになっていた。
やがて、妻や親戚に気遣い、時雄の家から妻の姉の家に住まいを移し
芳子を女塾に通わせた。
花袋の表現は、心がありそして、美しい。
芳子を語る花袋の表現は、実在した乙女のようにも感じられる。
「美しいこと、理想を養うこと、虚栄心の高いこと__こういう
傾向をいつとはなしに受けて、芳子は女学生の長所と短所を
遺憾なく備えていた」(本文より)
妻の姉の家での芳子の生活は
男友達が部屋に遊び来たり、帰宅時間が遅かったりと
自由奔放で近所の評判になる。
何度かの帰省中に、芳子に京都の大学生の恋人ができる。
田中秀夫 二十一歳。
芳子の恋人、田中の存在を知ると
時雄は心おだやかにはいられない。
「時雄は悶えざるを得なかった。わが愛するものを奪われたと言うこと甚だしくその心を暗くした」(本文より)
芳子はすでに、田中とは深い関係であるにもかかわらず、二人は清い間柄として
二人の恋の証人、保護者として芳子の両親に万事円満に済むよう
時雄に信頼を寄せた。
時雄は疑いつつも、嫉妬しつつも、道徳的な師の立場と恋心のはざ間で苦しみ
酒にひたる。
そして、監督責任を理由に再び時雄の家に、芳子を連れ戻した。
その後、田中は「東京で働く」と上京する。
「、、、、、君がどうしても東京にいると言うのなら芳子を国に帰すか、この関係を父母に打ち明けて許可をもらうか、二つに一つを選なけらばならん、、、、、、」(本文より)
と、時雄は田中の帰国を説得するが受け入られなかった。
二人の恋が、人目に余るようになると
時雄は監督上の責任として、すべてを芳子の父母に報告し
その間も、自らの心を偽って、二人の恋の温情な保護者を務めた。
芳子は、父母からの許可はもらえるはずもなく
ついに二人は、いっしょに生きることを決心する。
芳子の父親が上京し、四人で話し合いをするが
最後は芳子が帰国することに決まる。
それは時雄も芳子を失うことを意味する。
時雄は思うのだった。
「-その全部を一書生に奪われながら、とにかくその恋に就いて真面目に尽くしたかと思うと腹が立つ。その位なら、-あの男に身を任せて居たくらいなら、何もその処女の節操を尊ぶには当たらなかった。自分も大胆に手を出して、性欲の満足を買えば好かった。」
(本文より)
何とやるせなく、はかない、愚かしい思いだろう、、、、、、
芳子は手紙で
田中との深い関係を時雄に告白すると
時雄は、その手紙を受け取らず即刻父親と帰国するよう
父親が滞在する旅館に、芳子を送り預けるのだった。
田中から芳子を引き離した、ということで満足感を覚えつつも
時雄には恋しさばかりが残った。
そして
「さびしい生活、荒涼たる生活は再び時雄の家におとずれた。子供を持てあまして喧しく叱る細君の声が耳について、不愉快な感を時雄に与えた」(本文より)
芳子を置いた二階の部屋
残り香の「蒲団」に顔を埋めて、時雄は泣くのだった。
文学史に残るラストシーンは、あまりにも有名
直接、本を手にとって読むところだ。
平成と明治の不倫事情は違うが
中年男の、揺れる心の音を聞きながら読みたい。
十代にこの小説を読んでもつまらなかっただろう
二十代ならどうか?
恋を知ってはいても、面白く読めただろうか?
六十代になって、やっと読めた気がする。
横山芳子は、岡山県の田舎の豪家に住み
東京で美文的小説を書いている竹中時雄に
弟子入りを願う手紙を、再三出していた。
最初は取り合わなかったが、芳子の志の強さを感じ
時雄は弟子入りを認めることとなった。
父親と共に、芳子が時雄宅を訪れたころ
時雄の妻は、三人目の子供を出産したばかりで
時雄は結婚生活にしろ仕事にしろ、すでに孤独であった。
時雄三十六歳、芳子十九歳。
華やかな声、艶やかな姿の芳子が
先生!先生!と慕ってくると
時雄の心はときめき、恋しく思うようになっていた。
やがて、妻や親戚に気遣い、時雄の家から妻の姉の家に住まいを移し
芳子を女塾に通わせた。
花袋の表現は、心がありそして、美しい。
芳子を語る花袋の表現は、実在した乙女のようにも感じられる。
「美しいこと、理想を養うこと、虚栄心の高いこと__こういう
傾向をいつとはなしに受けて、芳子は女学生の長所と短所を
遺憾なく備えていた」(本文より)
妻の姉の家での芳子の生活は
男友達が部屋に遊び来たり、帰宅時間が遅かったりと
自由奔放で近所の評判になる。
何度かの帰省中に、芳子に京都の大学生の恋人ができる。
田中秀夫 二十一歳。
芳子の恋人、田中の存在を知ると
時雄は心おだやかにはいられない。
「時雄は悶えざるを得なかった。わが愛するものを奪われたと言うこと甚だしくその心を暗くした」(本文より)
芳子はすでに、田中とは深い関係であるにもかかわらず、二人は清い間柄として
二人の恋の証人、保護者として芳子の両親に万事円満に済むよう
時雄に信頼を寄せた。
時雄は疑いつつも、嫉妬しつつも、道徳的な師の立場と恋心のはざ間で苦しみ
酒にひたる。
そして、監督責任を理由に再び時雄の家に、芳子を連れ戻した。
その後、田中は「東京で働く」と上京する。
「、、、、、君がどうしても東京にいると言うのなら芳子を国に帰すか、この関係を父母に打ち明けて許可をもらうか、二つに一つを選なけらばならん、、、、、、」(本文より)
と、時雄は田中の帰国を説得するが受け入られなかった。
二人の恋が、人目に余るようになると
時雄は監督上の責任として、すべてを芳子の父母に報告し
その間も、自らの心を偽って、二人の恋の温情な保護者を務めた。
芳子は、父母からの許可はもらえるはずもなく
ついに二人は、いっしょに生きることを決心する。
芳子の父親が上京し、四人で話し合いをするが
最後は芳子が帰国することに決まる。
それは時雄も芳子を失うことを意味する。
時雄は思うのだった。
「-その全部を一書生に奪われながら、とにかくその恋に就いて真面目に尽くしたかと思うと腹が立つ。その位なら、-あの男に身を任せて居たくらいなら、何もその処女の節操を尊ぶには当たらなかった。自分も大胆に手を出して、性欲の満足を買えば好かった。」
(本文より)
何とやるせなく、はかない、愚かしい思いだろう、、、、、、
芳子は手紙で
田中との深い関係を時雄に告白すると
時雄は、その手紙を受け取らず即刻父親と帰国するよう
父親が滞在する旅館に、芳子を送り預けるのだった。
田中から芳子を引き離した、ということで満足感を覚えつつも
時雄には恋しさばかりが残った。
そして
「さびしい生活、荒涼たる生活は再び時雄の家におとずれた。子供を持てあまして喧しく叱る細君の声が耳について、不愉快な感を時雄に与えた」(本文より)
芳子を置いた二階の部屋
残り香の「蒲団」に顔を埋めて、時雄は泣くのだった。
文学史に残るラストシーンは、あまりにも有名
直接、本を手にとって読むところだ。
平成と明治の不倫事情は違うが
中年男の、揺れる心の音を聞きながら読みたい。
2018-05-16 21:00
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